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2023/04/04

実施と決定

~任せるのは「実施」であって、「決定」ではない。~

 「任せる」というのはどういうことなのか。
 言葉の意味も分からぬままに、やたらに使うから、会社をつぶしかねないような事が起こるのである。広くあまねく世間に行き渡って、大きな害毒を流し続けているのである。だから、「任せる」という言葉の定義づけをしておかなければならない。その定義はどんなものだろうか。事業というものは、やり方の上手下手で運命が決まるものではない。決定によって運命が決まるのである。その決定を行う人こそ社長である。社長が決定を誤れば会社はつぶれるか、つぶれないまでもピンチに陥ったりする。あるいは、いつまでたってもウダツの上がらないボロ会社でいなければならないのである。決定というものは実施に移される。その実施が社員の役割である。決定は社長、実施は社員の役割である。そして任せるのは実施であって、決定ではない。
     (日本経営合理化協会 一倉定の社長学第9巻「新・社長の姿勢」より引用)

 昨今の主たる経営課題は、値上げ交渉です。
 仕入れ価額の値上げ、材料や諸経費の値上げ、電気代の値上げ、そして、大手における賃金アップの満額回答、その中で我が社の存続と有能な人材の確保のために値上げ交渉は必要になってきています。そんな時に、営業担当者に、「○○の値上げをしてこい、ダメなら断られてもかまわん」と指示することも想定できますが、これで、決定は社長・実施は社員の構図と言えるのでしょうか。
 従来から人間関係を作って仕事を続けてきた営業担当者にはあまりにも酷な話と映りませんか。仕入れ、下請け、取引先、これらは我が社を取り巻く大切なネットワークであり、そのネットワークとして仕事に取り組んできたはずです。そもそも値上げは誰もが応じたくないと思っているものですが、それでも我が社をネットワーク内での重要なパートナーとして位置づけていれば、一言文句を言ってでも必要な値上げには応じるはずです。
 値上げにはその視点が、今、必要なのではないでしょうか。そうすると、相手にとって我が社は必要なパートナーなのか、我が社にとっても重要なパートナーなのか、経営者自身が決断する必要がある内容だと思います。値上げは単なる「実施」ではなく、我が社の将来の重要な「決定」を意味するものではないでしょうか。
 値上げは社員の生活を守るための必要事項なのですが、その交渉では、相手の今後の方針を十分に入手できる良い機会でもあり、将来の我が社の大切なパートナー選択の決定事項になりうるものと思います。
 計算根拠を十分用意した上で、社員に任せず、経営者自ら未来への方向性に繋がる値上げに取り組むことが今大切ではないでしょうか。
所長による経営随想コラム R0504号

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