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2024/03/11

社員の「自己実現の達成」が重要な役割

 心理学の第一人者であるアブラハム・マズローは、「自己実現」を人間が持つ欲求の最上位に位置付けたことで知られています。自己実現というと「目標や夢をかなえて、したいことができる状態になること」と誤解している人が多いかもしれません。しかし本来の自己実現は、まったく異なる意味を持つ概念です。

 本当の自己実現とは、利己と利他の二文法が解消された姿である。
 つまり、自分以外の誰かのために働いた結果、自分の利益にもつながる実感を持つことが、自己実現につながるということです。
 マズローの定義では利己と利他、つまり自分の利益と他人の利益がイコールにならなければ、本当の自己実現とは言えないのです。この言葉は今の時代にこそ、働くモチベーションの本質を突いているように思えてなりません。

 商品をたくさん売る、お金をたくさん稼ぐ、自分のしたいことをするといった喜びは、あくまで利己的なものです。しかし、それが誰かの役に立つという利他の喜びと結び付いた時、人間は初めて本質的な欲求を満たすことができるのです。
 私も数々の企業と関わってきましたが、誰かのために商売をしていると実感できる組織は、社員のモチベーションも定着率も高く、その結果として高い業績を上げていることに気づきました。一方、業績が良く給料の高い企業でも、お客さんの満足や仲間への貢献を実感することができない組織は、社員のモチベーションは上がらず、事なかれ主義に陥ったケ-スも見てきました。
 「何のためにこの商品を売っているんだろう」と感じてしまうような環境下では、働く意義を見出すことができず、「考えない社員」が次々と増殖していったためでしょう。
 そもそも心理学者であるマズローが経営についての本を書いたのは、人間にとっての幸福を考える上では、企業やそこで働く人々の研究が欠かせないと考えたからです。会社で働くということは、それほどまでに人々の根源的な幸せと密接に結び付いているのです。
      (小さな部門横断チームで稼ぐ組織を育成する 藤富雅則著 より引用)

 経営のトップダウンによる意思決定の早さがますます重要とされる昨今の中で、社長がいると「メンバーは発言できなくなる」という弊害も顕著になってきます。どうしたら良いのでしょうか。筆者は提言しています。
   メンバーの発言に対し、社長の「断言発言」は禁止する。
   その代わりに「なぜ、そう思ったのか?」とメンバーに問うてみる。

 断言発言とは、社員の発言に秒殺で否定的は判断を発言する意味だと思います。
 経営者といえど、会議室では現実にはたどり着けない、現実とは、顧客の、買い手の心の中にしか存在しないためです。「かも知れない」とする仮設をまず捉えてみる、そしてそれを顧客目線で、現場で、検証していく、そこで始めて現実にたどり着くものです。これを社員と共に進める、社員のモチベーションが上がる瞬間に繋がるのだと思います。
 社員と、現場で共に「考える」一体感がとれる組織、今必要なんだと思います。
所長による経営随想コラム R0603号

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