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2020/09/08

権限を委譲するのは部下に仕事をさせるためではない

 「権限の委譲が十分かつ適切に行われないと、企業目的を遂行するのに非常に能率が悪い」なんてのは、愚論である。あるいは、「部下を働かせるには、部下に権限を委譲しなければならない」などは、部下のために上役があるような口ぶりである。部下のために上役があるのではなく、上役のために部下があるのだ。本末顛倒である。
 「部下のために」、「部下は」、「部下から」など、部下のことばかり考えていれば上役はいいらしい。下向け、下向けというのだ。たいせつなことは、下を向くことでなくて、上を向くことなのである。これからの組織論、管理論では、「上役のために」、「上役は」、「上役から」というふうに、上向きにならなければならない。"企業目的を達する"ためには、下を向くまえに上を向かなければならないのは、わかりきったことであるのに、なぜ、これがほとんど論じられないのであろうか。
 では、上向きの、そして前向きの権限委譲とはどのようなものであろうか。・・・・・・それは、経営者(経営担当者も同様)が、前に進むための時間を生みだすために、部下に権限を委譲するのだ。これがほんとうなのである。
  前進する以外に、生きる道のないのが、企業の宿命なのだ。もしも、経営者が部下に仕事をまかせなければ、日常の仕事に足をとられて前進できない。前進するためには、部下に仕事をまかせる以外にない。部下が必要なのは、ここに真の理由があるのだ。

(マネジメントへの挑戦復刻版 一倉定著 日経BPより引用)

 コロナ禍が続いています、そしてまだまだ続きます。資金繰りを圧迫する大きな赤字でなければ、現状をやむを得ないと判断して経営者の興味の中心が減少する現場仕事に向かう、いわゆる下向けの仕事となっていませんか。嵐は過ぎ去るのを待つと構える戦略も後に正しいのかも知れません。ただそれでも、経営者のすべき仕事を実施した上での決断であってほしいと思います。
 筆者は、経営者の仕事について8つの基本原則をあげています。
 ①まず自分自身を管理せよ  ②上を向け  ③速やかに決断をくだせ
 ④目標を設定せよ  ⑤結果に注目せよ  ⑥時間を有効に利用せよ
 ⑦優先順位を決定せよ  ⑧人の長所を利用せよ

 権限委譲は、まさに②を実現するための手段であると指摘しています。既存のビジネスが壊れて新たな形に、かなりのスピードで変わり始めています。そして、市場やお客様の要求の変化が迅速にビジネス化されていく変革化の時代の始まりです。経営者の仕事は明確です。何を大切にし何に経営資源を集中していくのか、前を向いて情報を集め決断していくこと、今まさにすべき仕事と思います。

所長による経営随想コラム R0209号

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