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2020/11/10

責任の範囲は明確にできない

 「責任の範囲を明確にきめなさい」という主張には、だれも反対はしないであろう。ところが、これがまたまた、責任のがれの伝家の宝刀として利用されているのが現実なのだ。
・・・問題なのは、野球にたとえれば、一塁手と二塁手の中間に、どちらの守備範囲ともきめられないところに打球が飛んだばあいなのだ。このときに、守備範囲が明確にきめられていないから処理できないと一塁手と二塁手がいったとしたら、監督はこういう選手はクビにするにきまっている。じつは、ほんとうにたいせつなのは、このような事態でそれをどのように処理するかである。一歩誤れば、ヒットにされるからである。会杜の業績を低下させるからである。
 野球では絶対にゆるされないことが、会社のなかでは、「責任範囲が明確にされていなかった」ということで、公然と許される。いや、それをきめなかった経営者が悪い、上司が悪い、ということになる。
 会社のなかの問題は、責任や権限を明確にきめないからおこるのではなくて、明確にしたくともできない個所におこるのである。

(日経BP 一倉定著 マネジメントへの挑戦 より引用)

 コロナ禍にあって、業績が戻りつつある会社、まだまだ大きな赤字が続く会社、業態によって環境の違いがはっきりとしてきだしました。こんな時には、顧客の変化や環境の変化に我が社をいち早く合わせられた会社が生き残っていくように感じます。
 変化に気づいた現場の社員が、「これは私の仕事ではありません」と我関せずとする対応をこんな時にしていたら、回復・成長のチャンスが瞬く間に遠退いてしまうことでしょう。
 だから社員の責任範囲をさらに明確にしなければと、ここで経営者が主張し出したら、社員は責任範囲外を探し弁明する行動にも繋がってしまうことに気づくべきと思います。
 理屈抜きです、生き残るためには、社員が協力し合い、その場、その場で全力を尽くす行動が今、とれる組織にできるかどうかなのです。

 筆者の解決策として野球の例で次のように述べています。
 「会社の仕事でも、まったく同じである。どの部門で処理したらいいかわからない問題でも、問題に関係のありそうな人や部門はわかるのである。これらの人々が期を失せず協議し、判断し、決定するのだ。これ以外に解決の道がないのが現実なのだ。
 あるときは分担し、あるときは一人が責任をもち、他はこれを応援する、というふうにである。二塁後方に上がったフライに遊撃手、二塁手、中堅手は三人ともこのボールを追う。こうした場合は、だれかが処理の意志表示をする。あるいは、上司や同僚のタイミングのよいアドバイスできめるときもあろう。これと同様である。
 組織や職務分掌というものは、野球に例えれば守備位置とわかりきった守備範囲をきめるようなものである。ただそれだけなのだ。それ以上の何ものでもないのである。」

所長による経営随想コラム R0211号

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