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2022/08/09
「完璧な」プランなど存在しない
企業経営にとって「プラン」とは何だろうか。
組織を率いるにはかならずプランが作られ、当初のプランは環境の変化とともに修正されなければならない。多少の修正で済んで目指すゴールが変わらないならよいが、そうとは限らないのが現実だ。
「見通しの甘さ」、「外部環境の変化」、「能力不足」などがあればゴールに到達できない。あるいは、到達できても組織の理念とかけ離れた場所に行ってしまう。
中でも外部環境ファクターは予想外の進展が多く、未来の環境は「神様」でなければ制御できない。「競合他社の戦略」、「政治の動き」、「消費者の変化」、「自然災害」・・・など、外部環境はさまざまだが、ロシアによるウクライナ侵攻はその最たるものである。また、長引くコロナ禍は消費者の行動を変え、従来のマーケティング分析を無意味にした。さらに、世界最速と言われていた日本の少子高齢化だが、これからは中国の方がより深刻になるという予測が台頭し、中国市場への依存度が高い日本企業に想定外の影響を与えそうだ。そこで重要になってくるのが「プランB」の策定である。
・・・「プランB」とは「予想外の事態に対応する一手」「自らの読みの甘さを踏まえた上での挽回の一手」でもある。状況の変化、悪化に「こんなことがあっていいはずがない」と呆然として、現実逃避をしたり、過去のプランAの破棄をするのに逡巡したりしていたら、あっという間に経営も組織も破綻してしまうだろう。だからこそ「プランB」は「その時」になって慌てて探していては手遅れになる。
プランAを立てた時点で、すでに予想外の状況をいくつも想定して「プランB」が策定されるべきものであり、けっして「代替策」のような性質のものではない。超一流の棋士、チェスプレイヤーは、いくつもの選択可能性を同時に脳内でイメージしながらプレイをしていると言われるが、企業経営もまた同じなのである。
(プランBの教科書 尾崎弘之著 インターナショナル新書より引用)
一緒に仕事をしている尾崎先生の新刊本です。尾崎先生は、多くの実務経営者と話をし続け、破壊的危機の時代である今、必要な「プランBの時代」を出版されたようです。
中小企業経営で改めて考えてみると、会社の業績で先が見えず悩む経営者が多く、リーマンショックの時を超える長さでの環境変化と考える必要もあると思っています。
そんな中、顧客のところに行き、顧客の立場に立ち、顧客の求めるものを探り続け、生き残る方法を探索する、現事業中心の「プランA」が最も今重要なことは言うまでもありません。
しかし、これに固執しすぎて顧客と共に衰退していく可能性まで想定が必要です。
「プランB」と称する「予想外の事態に対応する一手」とは、その視点で考えておかなければならないものかも知れません。常に冷静な視点、客観的な視点で自社の「プランA」と異なる「プランB」(これが何であるか私にもわかってはいませんが)を作るために、さらに日頃からアンテナを高く頭を柔らかくして多くの可能性をシミュレートしていくことを求められる時代に入っていると私は思っています。
現業のストレスに押しつぶされる前に、業種も超え、様々なものをまず見ていきましょう。柔らか頭で、「プランB」という考え方をも習慣化すると、様々なきっかけに巡り会うかも知れません。生存していく手は必ずあります。
所長による経営随想コラム R0408号